アメリカのグリーンカード(永住権)を取った時点で、自分が、このままグリーンカードのまま、アメリカに住むのか、それとも、市民権を取得した方が良いのか、非常に悩む所ではないでしょうか。市民権を取得すると、日本国籍を放棄しないといけない義務があるとの事で、非常に慎重に検討をしていきたいところです。具体的には何が違うのか、を書き出してみました。
〇アメリカ国家による保護
アメリカ国外で犯罪や動乱に巻き込まれた時に、アメリカ国外で戦争や災害に巻き込まれた場合、例えばアメリカ国民の救助にヘリコプターが降り立っても、永住権保持者は「アメリカ人」ではないため、救助の優先順序は国民より低いでしょう。ただし、永住権保持者でも、アメリカ国民の配偶者であれば、優先度は高まります。アメリカ国民は、永住権を持つ「日本人」を保護するために、軍や政府に税金を払っているのではないという考え方です。このような緊急事態の際、永住権保持者は、日本政府に助けを求めなければならないとのことです。
〇日本領事館による保護 米国籍になると日本の領事館に助けを求めても助けてくれません。日本は例外もありますが基本的に二重国籍を認めておりません。米国人になったとたんに、日本の国の保護は受けられません。
〇家族の呼び寄せと帰化のリスク
親族をアメリカに呼び寄せたい場合に市民権保持者と永住権保持者を比較すると、市民権保持者の方が、明らかに有利でしょう。理由は、移民手続きの優先順位が永住権保持者よりも高いことにあるでしょう。
家族をスポンサーとする移民手続きの優先順序
第1優先 米国市民の未婚の21歳以下の子供、配偶者、親
第2優先 米国市民の未婚の21歳以上の子供
第3優先 永住権保持者の配偶者、未婚の21歳以下の子供
第4優先 米国市民の既婚の子供
第5優先 米国市民の兄弟
市民権保持者であれば、移民カテゴリーによっては、Adjustment of Statusのみなら4カ月、Consular Processingでも6カ月から1年で済みます。永住権保持者の場合、現状では少なくとも3年以上はかかります。例えば、永住権保持者が、日本へ帰って結婚したとします。その配偶者とアメリカで一緒に住もうとしても、配偶者の永住権取得に大変な時間がかかります。その間、合法的にアメリカに滞在できるビザを配偶者が取得できなければ、夫婦と言えども日米で別居することになります。ですから、まず市民権を取得してから配偶者を呼ぶのが賢明。また、永住権保持者は、市民権保持者と違って、自分の母親や父親を呼び寄せることができません。呼び寄せに関して、永住権のみでは難しいようです。
二重国籍についてアメリカ市民権を取った時点で、何もしなくても日本国籍は自動的に抹消されるという。しかし、領事館に国籍喪失届けを出さないと、戸籍上は日本人になっているので、これは国籍法違反となります。また、アメリカ市民権取得後も日本のパスポートを使い続ける人も中にはいますが、これも旅券法違反で、発覚すれば逮捕されることもあります。両親もしくは一方の親が日本人で、アメリカで生まれた人については、この状況は異なるという。生後、領事館に出生届を提出することで、その子は日本国籍を有することになる。しかし、アメリカは、両親の国籍がアメリカ以外でも、アメリカ国内で生まれた子にはアメリカ国籍を与えている(出生地主義)。そのため、22歳までは日米の二重国籍でいられるのです。22歳になる前に日本の国籍法の下、日本国籍を選ぶかどうかを申告しなければなりません。この時、日本国籍を選択すると、アメリカ国籍を放棄するよう言われますが、その手続きをしなくても、日本国籍取得を拒否されることはありません。また、日本国籍を選択したからといって、アメリカ政府は、その事実のみで、アメリカ国籍を放棄したとは見なさないでしょう。この場合、自然に二重国籍が継続するという状態になるようです。
また、永住を約束された永住権保持者でも、日本へ強制送還になる可能性もあります。永住権保持者が国外追放になるケースは大きく分けて2種類、重犯罪を犯した場合と、アメリカ国民にのみ与えられている権利を濫用すること。
加重重罪による強制送還
「婦女暴行、人に向けての発砲、殺人、薬物の密輸や大量所持などの重犯罪を何回も犯すと、永住権を持っていても強制送還されます。また、過失致死の場合でもケースによりますが、永住権を失う可能性はあります。なお、飲酒運転は何度逮捕されても、人身事故でなければ強制送還の対象にはならないそうです。
また、永住権保持者が重罪を犯した場合、刑期が終わると強制送還となります。犯罪の度合いにより、1回でいきなり送還される場合もあれば、2回目以降で送還される場合もある。
米国民固有の権利の濫用
例えば、米国国境で移民局員に、永住権保持者であるにも関わらず、アメリカ国民だと嘘をついた場合があります。そこで、永住権保持者であることが判明すると、強制送還になります。また、選挙権がないにも関わらず、選挙に参加すること。
〇長期間国外で過ごす
仕事で国外へ長期赴任や、親の看護などで帰国して、1年のうち半分以上をアメリカ国外で過ごすと、永住する意志がないと見なされ、永住権を剥奪される可能性がある。
『Re-entry Permit』を移民局から得ないで、1年以上アメリカを離れると、再入国の際にグリーンカードを取り上げられる恐れがあります。仮に1年に1回アメリカに戻って来たとしても、アメリカに住所がない場合や、仕事をしていない場合、同じようなことが起こりえます。Re-entry Permitの取得は、通常2回までと言われていますが、それ以上申請している人もいます。なお、Re-entry Permitは『これからしばらく海外に行きます』という意思表示をするものです。しかし、Re-entry Permitを持っているからといって、再入国の際にグリーンカードを剥奪されずに済むという確証はありません。また、アメリカ滞在中に指紋押捺、写真撮影を行わなければならないなど、手間がかかる上に、最近では取得自体が難しくなっているのです」と説明している。
また、10年に1度、永住権は更新を行わなければならない。これには現在、指紋押捺の費用80ドルを含め、290ドルかかる。犯罪歴がなければ、更新はインターネットで簡単にできるます。
市民権保持者には、これら海外渡航期間の制限や更新などは一切ない。
〇アメリカの企業に勤めていて、成功をしたいのなら、米国籍の方が有効?! やはり、アメリカの企業で働いているのであれば、永住権のままでいるより、米国籍の方が、昇進するにあたって、ある程度、心情的に有利に働くのではと思います。永住権でいると言う事は、半分は外国人みたいな所があるのかと思います。あまり大企業だと、全く気にしない所かもしれませんが。
〇職業の選択
永住権保持者は、特定の政府機関、例えばホワイトハウスやFBI、CIAなどの仕事に、就くことができません。また、国家の機密事項を扱う部署に所属することもできません。ただし、安全保障に関わるポジションを除き、州によって規定は違うかもしれませんが、市警察は、永住権を持っていれば、働くことができます。
また、永住権保持者も軍隊には入隊できますが、機密関係の部署で働くことはできません。国家公務員や地方公務員などの仕事によっては、市民権所持が就労の前提条件になっていることが多々あります。民間部門でも、弁護士として働くことはできても、例えばFBIの弁護士として働くことはできないといった制限があります。 国家の安全に関わる職業は、制限されているみたいです。
〇兵役登録
あまり、知られていませんが、永住権と市民権保持者に共通する国家安全保障に関わる義務に「セレクティブサービスへの登録(兵役登録)があります。
永住権と市民権を保持する18歳から25歳の男性は、皆、セレクティブサービスに登録しなければなりません。しかし、健康に問題や、宗教の関係で義務が免除されることもあります。永住権保持者の場合、これに登録していないと、将来市民権を取る時に悪い影響が出る恐れがあります。アメリカ人の若者は、学校などで登録を呼びかけられますが、日本人に呼びかけされる機会があまりないため、このことは忘れられがちです。なお、登録後に戦争に行くことを拒む(兵役忌避)と、永住権保持者、市民権保持者に関わらず刑務所に送られることになります。
〇選挙権 市民権保持者であれば、地方、国政に参加することも、一票を投じることもできる(ただし、大統領になるには帰化国民ではなく、アメリカ生まれのアメリカ国民であること、または、海外で生まれても両親がアメリカ市民であること)。
逆に、市民権を取得してしまうと、当然ながら日本の選挙権、被選挙権は失ってしまう。永住権保持者であれば、アメリカに住んでいながら、在外選挙人証を取得して、日本の選挙に投票することができる。なお、永住権保持者は陪審員として、アメリカでの裁判に参加する権利もない。
〇米国人としての税務と永住権の税務 税務に関して変わりはほとんどありませんが、永住権を持つ人の場合、全世界の収入を申告して、アメリカ国外にある資産を開示する義務があります(Foreign Bank and Financial Accounts Report /FBAR) この開示義務を嫌い最近米国籍を離脱する人も多いようです。
米国籍の離脱と永住権の放棄
永住権の放棄は簡単です。I-407をHomeland Securityに提出と8年以上永住権を持たれた方はIRSにForm 8854を提出します。ある一定以上の資産をお持ちの方は出国税(Exit税)を取られることがあります。永住権は放棄されても、再度取得することができますが再取得は、かなり難しいかもしれません。
米国籍離脱の場合は複数のインタビューを受けないといけません。コストも今は$2350かかります。そして一度放棄したら再度取得することはできないと思います。また日本国籍の再取得も、一度、自らの意思で外国籍を取得し日本国籍を喪失してしまいますと、日本に生活の本拠である住所をおいた上で帰化の申請をしなければ、再び日本国籍を取得することはできません。
〇日本と米国の社会保障制度比較
米国の社会保障制度は日本よりかなり劣っているというのが一般的な見解です。実際アメリカに住んで居ても、健康保険制度などで、身近に感じるように、かなり、その意味では住みにくいように思います。日本は社会保障が手厚く高齢者には、政府が介護や医療などで、しっかりとした保障があります。子供の医療が無料な自治体もあります。しかし、アメリカは自由度が高いからこそ、自分でしっかり将来設計していないと、なかなか大変な思いをするかもしれません。
〇相続税
日本の相続税法では受け取る人、贈る人、が日本の国外に10年以上いる場合は日本にある資産にしか日本の相続税がかからない仕組みです。つまり、米国籍であり、永住権者であれ、将来日本に帰って住む予定がない場合は、米国に資産を移されるほうが良いと思います。
ちなみに住民票を入れてしまうと、日本の居住者になってしまいます。
高齢になったときに別の国に自分の資産がある場合はその資産の管理、移動、処分などほぼ自分で行うのは不可能になっているという事実を忘れてはいけません。つまり米国籍でアメリカにずっといる人はアメリカに資産を。永住権でそろそろ日本に帰るという人は、日本に早く資産を移すのが理想的かもしれません。
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